診療情報管理士:仕事内容・資格詳細・口コミ・感想
診療情報管理士とは
仕事内容:医療の質と安全を支える縁の下の力持ち
診療情報管理士は、医療機関において、患者さんの診療に関する情報を適切に収集・整理・管理・分析する専門職です。その活動は、医療の質向上、医療安全の確保、経営改善、医学研究への貢献など、多岐にわたります。
具体的には、以下のような業務を行います。
- 診療録(カルテ)の管理・整備:医師や看護師が記録した診療録を、記録漏れがないか、記載内容に不備はないかなどをチェックし、正確かつ網羅的な状態に保ちます。
- 疾患別統計・DPCコーディング:患者さんの疾患や治療内容を、国際的な基準(ICDコードやDPCコード)に則ってコーディングします。これは、医療費の請求や、疾患ごとの罹患率・治療成績などの統計分析に不可欠な作業です。
- 各種集計・分析:患者数、疾患別発生率、手術別件数、入院期間、医療費などのデータを集計・分析し、医療の質の評価や改善点、経営上の課題などを明らかにします。
- 医療安全管理への貢献:インシデント・アクシデントレポートの分析などを通じて、医療安全上の問題点を特定し、再発防止策の検討に貢献します。
- 医学研究支援:研究に必要な診療情報を抽出し、データを提供することで、医学研究の進展をサポートします。
- 情報開示請求への対応:患者さんや遺族からの診療情報開示請求に対し、定められた手続きに沿って対応します。
診療情報管理士は、直接患者さんと接する機会は少ないですが、医療従事者と連携し、患者さんの個人情報である診療情報を正確に、かつ倫理的に管理することで、医療機関全体の運営を支え、間接的に患者さんの健康と安全を守る重要な役割を担っています。
資格取得の道筋
診療情報管理士の資格を取得するには、主に以下の2つのルートがあります。
① 診療情報管理士(民間資格)
- 認定機関:一般社団法人 日本診療情報管理学会
- 受験資格:高校卒業以上の学歴を有し、所定のカリキュラムを修了した者。
- 学習方法:大学、短期大学、専門学校などで、診療情報管理士養成課程を修了する必要があります。
- 試験内容:筆記試験(医療概論、医学知識、医療関連法規、情報処理技術など)
② 医療情報技師(民間資格)
- 認定機関:特定非営利活動法人 医療情報学会
- 受験資格:高校卒業以上の学歴を有し、所定のカリキュラムを修了した者。
- 学習方法:大学、短期大学、専門学校などで、医療情報技師養成課程を修了する必要があります。
- 試験内容:筆記試験(医療関連法規、情報処理技術、医療情報システム、統計学など)
どちらの資格も、一定の専門知識とスキルを証明するものですが、実務で求められる能力には共通する部分が多く、どちらを取得しても診療情報管理士としてのキャリアを築くことは可能です。近年では、より高度な専門性を求める声もあり、認定試験の難易度や内容も変化しています。
求められるスキルと人物像
診療情報管理士には、高度な専門知識に加え、以下のようなスキルと人物像が求められます。
- 医学・医療に関する知識:疾患、治療法、薬剤、検査など、幅広い医学的知識が必要です。
- 情報処理能力:PCスキルはもちろん、データベース操作や情報分析能力も重要です。
- 法令・倫理に関する知識:個人情報保護法などの関連法規や、医療倫理に関する理解が不可欠です。
- コミュニケーション能力:医師、看護師、事務職員など、多くの関係者と円滑に連携する必要があります。
- 正確性・緻密性:診療情報は機密性が高く、わずかな間違いも許されないため、丁寧かつ正確な作業が求められます。
- 責任感:患者さんの個人情報を取り扱うため、高い責任感が必要です。
- 学習意欲:医療技術や制度は常に変化するため、継続的な学習意欲が不可欠です。
診療情報管理士の口コミ・感想
やりがい・魅力
「患者さんの病気や治療の経過が、診療録という形で記録されていくのを見るのは、医療の進歩や個々の患者さんの回復の過程を垣間見ることができ、大きなやりがいを感じます。また、自分が管理した情報が、医療の質向上や研究に役立っていると実感できたときは、この仕事をしていて良かったと思います。」
「直接患者さんと接することは少ないですが、医療従事者の方々から信頼され、頼りにされる存在になれた時は嬉しいです。自分の専門知識やスキルが、チーム医療の一員として貢献できていると感じられる瞬間は、この仕事ならではの魅力です。」
「データ分析を通じて、医療機関の課題を発見し、改善策を提案できることに面白さを感じています。数字を読み解くことで、医療の効率化や質の向上に貢献できるのは、診療情報管理士ならではの醍醐味です。」
「医学や医療に関する最新の知識に触れる機会が多く、常に学び続けられる環境は刺激的です。専門性を高めていくことで、自分の市場価値も高まっていく実感があります。」
大変な点・苦労
「診療録の記載は、医師や看護師の記録に依存するため、記載漏れや不備がある場合、確認や訂正の依頼に手間がかかることがあります。コミュニケーションを円滑に行うための気遣いも必要です。」
「取り扱う情報が非常に機密性が高いため、常に細心の注意を払う必要があります。情報漏洩のリスクを常に意識し、厳重な管理体制のもとで業務を行う必要があります。」
「医学用語や専門知識は膨大で、常に新しい知識を吸収していく必要があります。学習意欲がないと、この仕事で活躍するのは難しいかもしれません。」
「DPCコーディングなど、専門性が高く、かつ正確性が求められる業務では、集中力と忍耐力が必要です。特に、複雑な症例のコーディングなどは、時間を要することもあります。」
「部署によっては、残業が多くなる場合もあるようです。ワークライフバランスを保つためには、効率的な業務遂行能力が求められます。」
キャリアパス・将来性
「病院での診療情報管理業務のほか、データ分析を専門とする部署への異動や、医療コンサルティング会社など、活躍の場は広がりつつあります。経験を積むことで、より専門性の高いポジションを目指せます。」
「近年の医療の高度化や、データに基づいた医療(EBM)の推進により、診療情報管理士の需要は今後も高まっていくと考えられます。特に、ビッグデータ解析やAIの活用といった分野での貢献も期待されています。」
「大学病院や大規模病院では、診療情報管理部門が充実しており、キャリアアップの機会も豊富です。中小規模の病院でも、専門職としての活躍が期待できます。」
「将来的に、地域医療連携における情報共有や、公衆衛生分野でのデータ分析など、より広範な分野での活躍も視野に入ってくるでしょう。」
まとめ
診療情報管理士は、医療機関の根幹を支える重要な専門職であり、その役割はますます重要になっています。患者さんの個人情報という機密性の高い情報を、正確かつ倫理的に管理する責任は大きいですが、医療の質向上や安全確保に貢献できるという大きなやりがいも存在します。
医学・医療に関する知識はもちろん、情報処理能力、コミュニケーション能力、そして何よりも正確性と責任感が求められる仕事です。常に最新の知識を学び続ける意欲があれば、将来性も高く、多様なキャリアパスが開かれる分野と言えるでしょう。
医療の現場を陰で支え、専門知識を駆使して医療の質向上に貢献したいと考える方にとって、診療情報管理士は非常に魅力的な職業であると考えられます。

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